三葉虫の謎

2018/01/28

リチャード・フォーティ、早川書房。タイトルのとおり、とにかく三葉虫について詳しく解りやすく書いた本。サブタイトルは「『進化の目撃者』の驚くべき生態」
とにかく三葉虫の話ばかりしている本である。体組織の分類から始まって、三葉虫の研究史、地質学・古生物学における三葉虫の重要性、三葉虫の眼球構造の特異性などなど、三葉虫というテーマを徹底して掘り下げている。横幅は広いのだが脇が甘い本と言うことはなく、三葉虫研究の専門家らしい鋭い文が続く。
一般向けを強く意識して書かれたライトサイエンスであり、大量の図版や独特の方向のある文章など、丁寧な中身を損なうことなく可読性は高い。特に自身の豊富な発掘・研究生活を語る部分の出来が良く、古生物学者というなかなかなじみのない領域を、興味深く楽しく読ませてくれる。ついでに言うと、グルードの断続平衡説に対して三葉虫研究者として反論を述べてもいる。
さまざまに横幅の広い内容でありながら、三葉虫という明確なテーマを逃さないので筆が迷うことがなく、非常に読みやすい。筆者の人柄からか、誠実な語り口は読んでいて爽やかで、全体的なテンポも時には専門的に、時には身近にと緩急のつけ方が巧みである。可読性と面白さ、科学読み物としての出来を兼ね備えた良著。